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タイトル:取締役の義務と責任について。その6
【2010年7月9日配信】
このテーマでの過去5回の記事は、『取締役の義務』に注視した内容でした。
今回からは、具体的な事例を交えて、「取締役が負うべき責任」について説明していこうかと思います。
「取締役が負うべき責任」というのは、「義務」を怠ったことによる代償として負うべきものとなります。
【事例】
会社のある取締役が「マンションを購入する資金が足りないので1000万円を貸して欲しい。借りたお金は、毎月10万円づつ返却する。」という申し出を会社にしました。
この申し出を役員会にかけたところ、それを承認することとなり、会社からこの取締役に1000万円を貸し付けました。
しかし、1年ほど経ったころ、この取締役が交通事故で突然亡くなってしまったのです。
会社としては、この取締役が購入したというマンションを差し押さえて、未返済の部分を当てようと考えましたが、調べてみると、この取締役はマンションなど購入しておらず、先物取引にそのお金を使っていたようです。
遺族には、「返済したい!」という気持ちはあるようだが、これといった資産もなく、返済する能力が全くないようである。
【事例はここまで】
このようなケースで会社に損害が生じた場合には、誰が賠償責任を負わなければならないのでしょうか?
会社法で解釈していくと、次のようになるようです。
※この説明をしていく上で、条文の不要な文言はあえて削除しています。
まず、会社から取締役にお金を貸し付ける行為は、会社法の第三百五十六条第一項第二号の
『取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしょうとするとき』
という行為に該当するいうことが前提にあります。
そして、会社法の第四百二十三条第三項には、次のように規定されています。
『第三百五十六条第一項第二号の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役は、その任務を怠ったものと推定する。
1.第三百五十六条第一項の取締役
2.株式会社が当該取引をすることを決定した取締役
3.当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役』
第一号の「第三百五十六条第一項の取締役」というのは、お金を借りた取締役自身になり、このケースでいうと、事故で亡くなっているので、該当する者がいないことになります。
また、第二号の「株式会社が当該取引をすることを決定した取締役」というのは、代表取締役のことになります。
第三号の「当該取引に関する取締役会の承認決議に賛成した取締役」という者には、積極的に賛成した者だけではなく、異議を唱えなかった者も含まれることになります。
明確に反対の意思表示をしなければ、「賛成した」とみなされるということです。
つまり、貸付を決定した代表取締役と、この取締役にお金を貸し付けることに反対しなかった取締役全員が連帯して賠償責任を負わなければならないということになるのです。
次回は、「取締役の義務と責任について。その7」という記事をお送りします。

